2013年07月26日

照江寺住職(沼津市) 橋本宗一氏

白隠の書画、石碑に再現
 照江寺住職(沼津市) 橋本宗一氏
橋本宗一
 現代人への教訓、後世に
 江戸時代に沼津を拠点に禅の教えを広め、500年に1人の高僧と称された白隠禅師(1686~1769年)は、優れた美的感覚の持ち主でもあり、多くの書画を残した。その生きざまや現代人への教訓を伝えるために、白隠の作品を自らの手で石碑に再現する活動を続けている。
 ー石碑の制作を始めたきっかけは。
 「もともと彫刻の経験はなかったが、10年ほど前から、ケヤキの板に書を彫って本堂に飾っていた。還暦を迎えた年のある日、自分の人生の証しを消えない形で残したいと思い、子どもの頃から影響を受けていた白隠禅師の書画を石に彫り始めた。以来、多くの住民や石材店の協力を得ながら石碑を作り続け、寺の境内に設置している」
 ー白隠禅師の魅力は。
 「白隠は若い頃からたくさんの作品を残しているが、晩年になるほど、書画の筆運びに迫力が増している。照江寺には、白隠が79歳の時に訪れて、村人に説法をしたとの言い伝えがある。年老いて体が衰えようとも、民衆に禅の教えを伝えたいという情熱を感じさせるエピソードだ。白隠の晩年期の生き方や作品を通じて、高齢化社会を迎えている現代人にいつまでも志を高く持つことの大切さを教えてくれるような気がする」
 ー境内には白隠の書画以外の石碑もある。
 「東日本大震災の犠牲者を供養するために、『自然を生きる怖いけれど海が好き』と刻んだ碑を建てた。福島県に住むいとこの玄侑宗久氏(芥川賞作家)が揮毫(きごう)した慰霊の言葉だ。短い言葉の中に、自然の優しさと厳しさ、私たちが忘れてはならない教訓、反省すべきことが凝縮されている。長い海岸線を持つ沼津市の人々はもちろん、日本中の人の心に刻んでおいてほしい」
 ー今後もさまざまな視点から白隠の魅力を発信していく。
 「白隠の書画の斬新なセンスは近年、首都圏の若者にも注目されている。ただ、作品の奥底にあるユーモアや白隠の人柄、禅宗の教えなど、まだ十分に伝わっていない部分もある。白隠が人生を全うした沼津の地から、それらを多くの人が共感できるような形で紹介していきたい。元来、寺は誰もが気軽に来られる場所。白隠に関心がある人だけでなく、芸術に興味がある人、旅が好きな人などにも、沼津の魅力が体感できる空間を提供していきたい」
(聞き手=東部総局・豊竹喬)
《静新平成25年7月26日(金)「本音インタビュー」》


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Posted by パイプ親父 at 05:04│Comments(0)人物
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