2013年01月09日
居山哲也(30)本気の遊び
出会い求め駆け回る
「本気の遊び」真っ最中

2012年12月のタ暮れ。沼津市幸町にある「いせや本店」店主の居山直行(63)は、菓子箱に懸け紙を付ける作業を続けながら、見慣れた外の風景に目をやった。
西武沼津店が閉店するー。街の一大ニュースに、直行も危機感を持った。
「まちに元気がない。この先どうなるかは怖い」直行は3代店主に就いた90年代から、世の中が変わり始めるのを感じたという。かつては企業が手土産用の菓子を大量に注文したが、時代と共に少なくなった。少子化で、結婚式場の引き出物としての需要も減った。
コンビニエンスストァの増加で、「ついで」に菓子が買えるようになった。だからこそ、わざわざ買いに来てもらえる価値のある和菓子と、もてなしで迎えたい。
「地元第一」の考えは変わらない。徒歩や自転車、車で来てくれるお客さんが支えだ。
**
息子の哲也(30)は、外を向いている。創業の地は沼津。伝えたい和菓子にまつわる物語もここにある。でも、商品を買ってくれる人が地元にいるとは限らない。都内の百貨店とも取引を始めた。
「新しいことができないと、ここに居続けることもできない」と哲也は言う。現状維持では、自分の代で商売をやっていくのは難しい。「親の世代は『いい時代』を知っているから動けない。僕が動けば、何か変わるかも」直行の応援もある。
**
この先、責任を持って自分が経営に携わり商品を作る立場になったら、人と関わって仕事を創る今のやり方を、同じように続けていくことはできないだろう。
作家や芸術家、パティシエと一緒にイベントや商品の企画を練る。それができるのは、今は、店を背負わず身軽なままでいられるから。いわば「本気の遊び」をしているようなもの。「誰か」とやる仕事と、「自分」でやる仕事とは違う。
さまざまな機会に、異業種の多くの人と出会った。仕事と遊びの境なく付き合えて、刺激をもらえるいい関係。
「遊び」の時間が終わっても、人の縁はきっと生かせる。
自分らしい和菓子作りを追求したい。いつか、看板商品も作ってみたい。思い浮かべるのは、誰かが喜ぶ顔。「期待して箱を開け、菓子を食べた人が、がっかりするようなシチュェーションは絶対に嫌」。頭の中は、新しい菓子のイメージであふれている。(敬称略)
(この章は社会部.大滝麻衣、柳沢桃子、写真部・浅井貴彦が担当しました)
《静新平成25年1月9日(水)幸せのカタチ「出会い求め駆け回る」》
「本気の遊び」真っ最中

2012年12月のタ暮れ。沼津市幸町にある「いせや本店」店主の居山直行(63)は、菓子箱に懸け紙を付ける作業を続けながら、見慣れた外の風景に目をやった。
西武沼津店が閉店するー。街の一大ニュースに、直行も危機感を持った。
「まちに元気がない。この先どうなるかは怖い」直行は3代店主に就いた90年代から、世の中が変わり始めるのを感じたという。かつては企業が手土産用の菓子を大量に注文したが、時代と共に少なくなった。少子化で、結婚式場の引き出物としての需要も減った。
コンビニエンスストァの増加で、「ついで」に菓子が買えるようになった。だからこそ、わざわざ買いに来てもらえる価値のある和菓子と、もてなしで迎えたい。
「地元第一」の考えは変わらない。徒歩や自転車、車で来てくれるお客さんが支えだ。
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息子の哲也(30)は、外を向いている。創業の地は沼津。伝えたい和菓子にまつわる物語もここにある。でも、商品を買ってくれる人が地元にいるとは限らない。都内の百貨店とも取引を始めた。
「新しいことができないと、ここに居続けることもできない」と哲也は言う。現状維持では、自分の代で商売をやっていくのは難しい。「親の世代は『いい時代』を知っているから動けない。僕が動けば、何か変わるかも」直行の応援もある。
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この先、責任を持って自分が経営に携わり商品を作る立場になったら、人と関わって仕事を創る今のやり方を、同じように続けていくことはできないだろう。
作家や芸術家、パティシエと一緒にイベントや商品の企画を練る。それができるのは、今は、店を背負わず身軽なままでいられるから。いわば「本気の遊び」をしているようなもの。「誰か」とやる仕事と、「自分」でやる仕事とは違う。
さまざまな機会に、異業種の多くの人と出会った。仕事と遊びの境なく付き合えて、刺激をもらえるいい関係。
「遊び」の時間が終わっても、人の縁はきっと生かせる。
自分らしい和菓子作りを追求したい。いつか、看板商品も作ってみたい。思い浮かべるのは、誰かが喜ぶ顔。「期待して箱を開け、菓子を食べた人が、がっかりするようなシチュェーションは絶対に嫌」。頭の中は、新しい菓子のイメージであふれている。(敬称略)
(この章は社会部.大滝麻衣、柳沢桃子、写真部・浅井貴彦が担当しました)
《静新平成25年1月9日(水)幸せのカタチ「出会い求め駆け回る」》