2013年01月06日

ホセ・ムヒカ大統領(77)  

ホセ・ムヒカ大統領(77)
 ウルグアイ 清貧大統領 世界で評判
 報酬の大半を寄付 公務の合間に畑仕事
元ゲリラ闘士「刑務所で人生学んだ」

 南米の小国ウルグアイの中道左派、ホセ・ムヒカ大統領(77)の清貧ぶりが世界で評判を呼んでいる。豪華な大統領公邸には住まず、報酬の大半を寄付し郊外の農場で生活。元ゲリラ闘士の経歴を感じさせない好々爺(や)ぶりで国民の人気も高い。
 ムヒカ氏が暮らすのは首都モンテビデオ中心部から車で20分ほどの農場だ。ウシが草をはむのどかな光景が続く農村地帯。建物や人影はまばらで"公邸"の前にはパトカーが1台止まっているだけだ。
 大統領の報酬月額25万ウルグアイペソ(約115万円)の9割近くを社会福祉基金に寄付するムヒカ氏の資産は、自宅農場と1987年製のフォルクスワーゲン(VW)ビートル1台のみ。クレジットカードや銀行口座を持たず、公務の合間にトラクターに乗って畑仕事と養鶏をして暮らしている。
 粗悪な麻薬が少年犯罪を招いているとしてマリフアナ合法化法案を提出し、議論を呼んだ。同性婚合法化法案も成立間近で、先進的な政策を進める。ウルグアイでは国民の多くがカトリック教徒で、政権支持率は4割弱まで落ちたが、ムヒカ氏自身の好感度は5割前後を維持。「ぺぺ」の愛称で国民に親しまれている。
 外交筋によると、大統領公用車は日本メーカーの乗用車で、指定席は要人が普通使う後部座席ではなく助手席。「服装や外交儀典を気にしない気さくなおじいちゃん」(同筋)の印象だ。
 「ドイツ人が1世帯で持つ車と同数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるだろう」。ムヒカ氏が評判を呼ぶきっかけとなったのは昨年6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)でのスピーチだった。国連加盟国193力国の最後、各国の参加者が去った後に登場した。
 聴衆がほとんどいない中「世界の70億~80億人が西洋と同じ消費生活をできるだろうか」「貧乏な人とは無限の欲があり、いくらモノがあっても満足しない人のことだ」と主張。インターネットで英訳や日本語訳が出回り評判になり、英BBC放送などは「世界最貧で最高の大統領」と紹介する番組を制作した。
 実はムヒカ氏は60年代、極左ゲリラ組織を結成。銀行襲撃や政治家誘拐で14年間服役した「元闘士」だ。だが、人口約340万人の農牧国のリーダーとして外国企業誘致を進める姿にかつての過激派の面影は全くない。
 「生きていられるだけで人生は素晴らしいじゃないか一。ムヒカ氏は昨年12月、訪問先のペルーで共同通信と会見し「刑務所で人生を学んだ。耐えることを覚えた」と満面の笑みで振り返った。ウルグアイ大統領には連続再選禁止規定もあり「もう年寄りだ。任期が終われば引退するよ」と穏やかに語った。(モンテビデオ共同)
《静新平成25年1月6日(日)朝刊》
 
  

Posted by パイプ親父 at 12:02Comments(0)素晴らしい