2013年01月07日

居山哲也(30)息子のプライド

居山哲也(30)
 息子のプライド
 店の再生「自分がやる」

 1人でJR三島駅のホームに立つ日が、月に何度あるだろう。東京、名古屋、奈良ー。和菓子屋の息子である居山哲也(30)は、新たな仕事のパートナーを見つけてはどこにでも足を運ぶ。
  哲也は、父親の直行(63)が社長を務める沼津市幸町の老舗和菓子屋「いせや本店」の4代目。早朝から、店舗裏の工場に入る。贈答品として人気のもなかにまんじゅう。季節によっては赤飯やおはぎ。一通り、和菓子を作る。
 ここまでが和菓子屋本来の仕事。その後、店を出て、もう一つの仕事の相手先に向かう。
 同世代の作家、茶人に声を掛け、展示会や茶会を企画する。器や場に見合ったオリジナルの和菓子を提供する。パティシエやシェフと一緒に和菓子を作り、デザイナーと組んで菓子そのものの形や包装を考えて商品化する。それが、自分流の仕事。和菓子を使って何ができるか、常に考える。
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 店に帰れば、まだ「勤め人」。でも、経営は気になる。
 2012年、店の「再生」を目標に掲げた。直行から、過去の決算書を出させるのには苦労した。親は、あくまで「親」。経営の話をまともにできるようになったのは最近
のことだ。
 現実は想像以上に厳しかった。見て見ぬふりはできない。「逃げられるやつはすごい」 逆に、エンジンがかかった。
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 12年5月。従業員に退職を促した。このままでは立ち行かなくなるのではないかー。すぐにでも変える必要があった。年上の職人を、まだ30歳の自分が「切る」苦しさ。本当は嫌われ者にはなりたくなかった。
 「自分がやらなきゃ、誰がやる」。何もしないのは簡単だ。でも、楽な選択肢は取らなかった。言葉を選び、店の状況を一人一人に説明した。 
 これが30歳ー。
 東京から戻り、店に入って7年。家業に対し、迷いもあった。「でも、この家に生まれたことに意味がある。どうせなら、何か探したい」。和菓子屋の息子としてのプライドに突き動かされた。
 実家が中小企業を営む同世代は多い。どこも経営は苦しい。離れていても、子供は親や地元のことが気にかかる。家業を継ぐのがすごく大事なことだと今は思える。
 どう捉えるかは自分次第。「こんな時代なのに、とは言わない。僕がやる」
《静新平成25年1月7日(月)「幸せのカタチ」息子のプライド》
  

Posted by パイプ親父 at 10:36Comments(0)熱き人たち