2008年11月15日

第51回沼津朝日賞:宍倉佐敏さん

第51回沼津朝日賞:宍倉佐敏さん
 繊維分析のエキスパート
 文化財の保存修復手掛け
第51回沼津朝日賞:宍倉佐敏さん 全国のどの製紙研究所でも難しいといわれる、全ての非木材繊維を判別する知識と経験を持つ、紙の繊維分析のエキスパート。現在、女子美大大学院非常勤講師を務め、繊維分析を専門に行う「宍倉ぺーパー・ラボ」を自宅に開設。日本鑑識学会会員として、全国の研究者や鑑識家に紙の見方などを講義している。
 宍倉さんは日大短大部経済学部を卒業後、特種製紙総合技術研究所の経理として勤務していたが、木材以外の製紙用植物繊維に興味を持ち、顕微鏡を買って自宅で独自
に研究を始め、半年後には研究員として迎えられた。
 以来、製紙用植物繊維の研究を中心に画材用紙、再生紙等の開発に携わり、リトグラフ用紙の機械による製造を全国で初めて実現させた。
 また、植物繊維の研究に合わせ、趣味で紙漉きに取り組み、材料となるトロロアオイや楮(こうぞ)を自宅で栽培し、紙作りを一から行う。
 退職後は、主に美術館等の依頼を受けて、文化財保存修復のための繊維分析分野で活躍。「JISの紙の試験法」の規格にない、宍倉さんが独自に開発した分析法で、JIS規格では六百本以上の繊維で約一㌢四方の紙片が必要になるが、宍倉さんの分析法では繊維十五-二十本という極微量の試料だけで何の繊維かを判別できるという。
 活躍の場は、もっぱら京都や東京で、重要文化財や国宝級の紙質の調査を手掛け現存する世界最古の印刷物として知られる「百万塔陀羅尼」、聖武天皇筆と伝えられる経典「賢愚経」の断簡(切れ切れになった書き物)「大聖武(おおじょうむ)」(奈良時代)、ピカソ晩年の自画像のキャンバス分析も行った。
 また、一昨年、著書「和紙の歴史」を出版。製紙用植物繊維の製法と原材料の変遷をテーマに、調査資料を基に解説。
 大学生や市内の子どもらに紙漉き指導を行っており、来年は沼津史談会で「郷土の紙の歴史」をテーマに講師を務めることも予定している。
 現在、完全には解明されていないという、奈良時代の紙を正確に再現することをライフワークとし、「長年の知識と経験を沼津のためにも役立てたい」と話している。
(沼朝平成20年11月15日(土)号)



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Posted by パイプ親父 at 12:50│Comments(0)受賞
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