2013年04月21日

四方一瀰氏に博士号

四方一瀰氏に博士号
 中等教育成立状況の研究が評価
四方一瀰氏に博士号
 元国士舘大教授で沼津市史編さん委員も務めた教育文化史家の四方一瀰氏が三月、社会科学の博士号をお茶の水女子大から授与された。
 二〇〇四年刊行の著書「『中学校教則大綱』の基礎的研究」で、我が国の中等教育の成立状況を明らかにした業績が高く評価された。
 博士号の取得について四方氏は「夏目漱石だって博士号は辞退してもらっていない。『それなのに私が…』という思いもあったが、(教育史研究者など)多くの人の勧めがあった」と話す。
 著書で扱った「中学校教則大綱」とは、中学校の授業科目や就業年数などを規定したもので、明治十四年(一八八一年)に定められた。
 江戸時代には教育機関として寺子屋や藩校があったが、互いに無関係に存在していた。明治になると、初等教育(小学校)、中等教育(中学校)、高等教育(大学)というヨーロッパ式の三層式学校制度が導入され、学校間の関係も定められたものの、中学校については整備が遅れた。
 中学校に教師が十分に配置されていない一方で、大学など高等教育機関では外国人教師が外国語で授業を行っていたため、高等教育機関に入学するためには、生徒が独自に外国語を学ばなくてはならないような事態も起きていた。そこで政府は中学校教則大綱を定めて中学校の充実に取り組み、これにより初めて三層式の学校制度が十分に機能するようになった。
 このように、この大綱は我が国の教育において重要な役割を果たしていたが、四方氏が研究に着手するまでは、誰もその内容まで深く立ち入ることはなかったという。そのため、四方氏は参考文献が無いような状態で史料の収集から始めることになり、全国各地の官公署などへ赴いて史料を探して研究を続けた。
 四方氏が、このように中等教育についての本格的研究を志すきっかけとなったのは、沼津東高の校史『沼中東高八十年史』の執筆に携わったことだという。
 一九三〇年に市内で生まれた四方氏は、旧制沼津中と県立沼津第一高校(いずれも現在の沼津東高)、早稲田大教育学部を経て、沼津学園高で教員を務めた後、同大院修士課程に入学した。
 その後、沼津市立高や県立高校の教員を務め、県立教育研修所で『静岡県教育史』の編さんに従事した。編さん事業終了後の七八年に国士舘大助教授となったが、この数年前より『八十年史』に関わっていた。
 こうした地方教育史の編さんや執筆活動を元にして、四方氏は『近代教育の展開と地域社会』という著書も刊行している。
 同書では、沼津兵学校から東海大海洋学部に至るまでの沼津の教育の歴史について、中等教育を中心に詳述している。
 研究活動への姿勢として、一つのことを実証的に掘り下げていくことと、全体を俯瞰して見ていくことの両立を重視する四方氏は、教育史の分野については学校施設や規則のことばかりではなく、実際の授業内容についても当時の史料を基に明らかにしていくことの重要性を提唱しており、これを「教育文化史」と呼んでいる。
 現在は、戦前の中等教育では、どのような授業が行われていたかを科目ごとに明らかにするべく、当時の教科書を収集して研究し、論文発表を行っている。
 四方氏は「すべての科目を網羅するには、あと二十何年か生き続けないと。それ以外にも、まだまだやりたいことはある」と語る。
 また、付属中高の校長も務めるなど二十数年にわたって続いた国士舘勤務時代も沼津の自宅から通勤していたという四方氏は、地元沼津に強い愛着を持っており、郷土史研究も手掛けている。
 昨年には市教委の生涯学習地域講座で金岡地区の教育文化について講演。人が住むのに適した地形だった同地区では古代以前から多くの人が住み、光長寺や大中寺等の寺院の影響などで教育を重視する風土が形成されていったことを解説した。
 このほか、自身が住む千本地区についても、「郷林」という地名を手掛かりに、千本松原が単なる景勝地ではなく、食料採取などの生活の場でもあったことを明らかにし、近代以降は地引き網などのレジャーとしての漁業を通して東京から多くの人を引き寄せたことや、結核療養地としての発展が東京から富裕層や医者などを呼び寄せ、これら知識人階級に属する人々が沼津の文化に大きな影響を与えたことなどを論証し、講演を行っている。
《沼朝平成25年4月21日(日)号》


タグ :教育史

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Posted by パイプ親父 at 07:12│Comments(0)素晴らしい
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