2013年05月07日

洋画家赤堀尚(85)

「赤堀尚展」三島・佐野美術館
 徹底した空間構成
洋画家赤堀尚(85)
 洋画家赤堀尚(85)=沼津市内浦出身=の個展が三島市の佐野美術館で開かれている。渡辺妙子館長との公開対談では「色彩の透明感」に対する世の評価に対し、徹底した現場主義とフォルム形成、空間構成を第一義に語り、赤堀自身の「意識の写実」ともいえる制作の一端を披露した。
 旧制韮山中から静岡第一師範学校を経て、両親と同じ教員となった。だが、終戦間もない混乱期の教員生活に疑念を抱き、1年足らずで職を辞し、東京芸大に浪人して進んだ。「死してやまぬ」の大義を終戦で失い、「命懸けでぶつかるものを探していたのかもしれない」。
 東京美術学校当時の破天荒な空気がまだ残る東京芸大で梅原龍三郎、林武、山口薫らに学び、専攻科修了後、1950年代後半からと60年代後半の2度、延べ7年間のフランス留学で画才を磨いた。
 狙いや後付けの理由を嫌い、「現場で描いた絵は最後まで現場で描け」という恩師林の言葉を奥底に、「いい風景に出合い、絵の具バックを広げている時が一番幸せ」と笑う。
 「一にフォルム、二にフォルム、三にフォルム。色のことはほとんど考えない」。青い月も緑の顔も「そう感じるから描く」とそっけない。ただ、故郷の澄んだ空気や水が「『透明感』の原点にあるのかもしれない」と追想する。
 昨年制作の「ミルクパンとコップ」(146×112㌢、油彩)は画面のほとんどを机と背景が占める。そのバランスと緊張感は、与謝蕪村や池大雅らの山水画との「空間の扱いにおける接点を描けたら」と願う真骨頂ともいえる。「余分なものは捨てるに限る」。捨象の境地である。

「赤堀尚展赤の軌跡」は19日まで。木曜休館。11日午後2時から明星大の宝木範義教授が「色彩の力 赤堀尚の風景と静物」と題して講演する。
《静新平成25年5月6日(月)朝刊》


タグ :美術展

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Posted by パイプ親父 at 11:16│Comments(0)人物
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